
このテーマは、私が現在受講しているFP実務研修で扱われた、架空の相談事例をベースにしています。
内容そのものは仮想の設定ですが、課題の整理や考え方の流れを言語化することで、自分の実践力を育てていくつもりでまとめました。
住宅ローンや教育費、老後資金、保険といった家計に関わる大きなテーマを、FPとしてどんな視点で整理し、どのように提案へつなげていくのか、そのプロセスをイメージしやすい形で紹介していきます。
相談事例

ここからは、今回の相談内容の前提となる状況を順を追って見ていきます。
家計の状態や将来の希望、気になっている点を把握することで、後の分析や課題整理が立体的になります。まずは、ご相談者である Yさんご夫妻の状況から整理していきましょう。
ご相談者の状況
Yさんは中堅の旅行代理店に勤める 39 歳の会社員。
ご家族は、専業主婦の奥さまとお子さま2人の4人家族で、現在は賃貸アパートにお住まいです。
ご夫婦で話し合った結果、2026年1月に新築マンションへ入居する方向で計画が固まっています。
- マンション購入予算:約 4,300 万円(諸費用込み)
- 頭金・諸費用に充てる自己資金:1,200 万円
- 住宅ローン予定額:3,100 万円(返済期間 30 年・金利 2.50%想定)
- 毎月の返済目安:約 11 万円(ボーナス払いなし)
一方で、「教育費が増えていく中で、住宅ローンを無理なく支払っていけるのか不安」という気持ちをお持ちでした。
奥さまは「タイミングを見てパートで働きたい」という希望もあるものの、Yさんとしては「家庭を優先してほしい」という思いもあり、働き方については検討中です。
お子さまの進路イメージは次のとおりです。
- 長男:公立小 → 公立高校 → 国立大学(学費目安:約 450 万円)
- 長女:公立小 → 公立中 → 私立高校 → 私立文系大学(学費目安:約 1,500 万円)
現在の貯蓄は、相続財産を含めて 約 1,400 万円。
この家計状況を踏まえ、家全体の資金計画をどう整えていくかが大きなテーマとなります。
Yさんが抱える4つの優先順位
お話を整理していくと、Yさんが特に大切にしたいポイントは次の4つでした。
- 早めにマイホームを実現したい
- 子どもの教育費を確実に準備したい
- 老後資金を不足させたくない
- 家族の保障(保険)を見直したい
どれも長期的な家計に関わるテーマであり、優先度が競合しやすいため、全体像を踏まえて組み立てることが重要になります。
分析と課題整理
住宅ローン・教育費・保険・老後資金は、お互いに強く関係し合うテーマです。
どれか一つだけを取り上げても、家計全体のバランスは見えてきません。
そこで今回のケースでは、
- 現在の収入と支出
- お子さまの進学プラン
- 住宅ローンの負担
- 将来のライフイベント
- 夫婦それぞれの希望
といった情報を踏まえ、家計の流れが将来どのように変動していくかを確認しながら、課題を整理していきました。
この整理によって、「どこにリスクがあるのか」「優先すべき対策は何か」といったポイントが明確になり、具体的な提案へつながっていきます。
現状のキャッシュフロー表
分析と課題整理で明らかになった内容を、数字として可視化するために、現状のキャッシュフロー表を作成しました。
この表では、
- 住宅ローン返済の推移
- 教育費の支出
- 生活費や老後資金の見込み
など、家計の主要な収支項目を長期にわたってシミュレーションしています。
読者の皆さまには、このキャッシュフロー表を通じて 現状の課題や将来のリスクポイント を直感的に理解していただけます。
参考:日本FP協会|わたしたちのくらしとお金|便利ツールで家計をチェック
キャッシュフロー表を見ると、4年後には貯蓄残高がマイナスとなり、最大978万円の不足が生じ、その後もプラスに回復しないことがわかります。
この後の「具体的対策」の章では、キャッシュフロー表をもとに、どのような改善策を提案したのか、その効果がどのように現れるかを確認していきます。
具体的対策

ここからは、Yさんの家計状況やライフプランを踏まえて整理した課題に対し、実際に検討した具体的な対策をご紹介します。
住宅ローンの選び方、保険の見直し、奥さまの働き方の選択肢など、家計全体を安定させるためのポイントを順に整理していきます。
住宅ローンの選択
現状のキャッシュフロー表で家計の推移を確認すると、教育費のピーク期に住宅ローン返済が重なることで、貯蓄残高が慢性的にマイナスになる可能性が見えてきたことを踏まえ、Yさんの家計に合った住宅ローンの選択肢を比較検討しました。
2025年現在、住宅ローンには固定金利・変動金利に加え、多様な商品が登場しています。Yさんの場合、返済負担を抑えつつ将来の教育費に対応できるかを重視し、次の3つを検討しました。
- 30年固定金利型ローン(当初5年 0.78%固定 → 6年目以降 1.78%固定)
教育費のピーク前に返済負担を抑えられる - 変動金利型ローン
将来の金利上昇リスクがある - 50年ローン
毎月の返済は軽くなるが、完済年齢が大きく上昇するため Yさんには不向き
スーパーフラット 新規借入 借入期間15年〜35年 2025年11月実行金利
| 自己資金 | 金利引き下げ期間中(最大) | 引き下げ期間終了後 |
|---|---|---|
| 5割以上 | 年0.750% | 年1.750% |
| 4割以上 | 年0.760% | 年1.760% |
| 3割以上 | 年0.770% | 年1.770% |
| 2割以上 | 年0.780% | 年1.780% |
| 1割以上 | 年0.880% | 年1.880% |
Yさんの場合、頭金・諸費用に充てる自己資金が約1,200万円(マンション価格の約28%)であるため、借入当初5年 0.78%固定 → 6年目以降 1.78%固定という条件が現実的な利率の根拠になります。
【検討結果】
返済期間30年の固定金利型ローンを採用する方針としました。
返済期間を長めに設定することで、教育費が重なる時期の家計のゆとりを確保できます。
さらに、家計に余裕が出たタイミングで繰り上げ返済を行えば、実質的に25年以内での完済も可能です。
長期ローンを選ぶ際は、教育費の増加や将来の金利動向、資産残高の推移などをキャッシュフロー表で確認しながら慎重に判断することが重要です。
保険の必要保障額の見直し
住宅ローン返済や教育費が重なる期間が長いため、万一に備える保障は非常に重要です。
キャッシュフロー表からも、将来の教育費ピーク期に家計に余裕が少なくなることが確認できるため、適切な保障額を設定することが求められます。
このとき、少し日頃は考えたくないことにも向き合う必要があります。たとえば、「万一、自分に何かあった場合に家族が生活を維持できるか」「教育費を支払い続けられるか」などです。
相談者の気持ちに寄り添いながら、安心して検討できるよう、具体的な数値をもとに確認する必要があります。
主な前提条件
- Yさんの死亡時期(住宅購入直後に万一のことが起きた場合を想定)
- 妻の平均余命:約88歳まで(Yさん死亡後、50年生存)
- 生活費の前提
- 現状:約25万円/月
- 夫死亡後:約18万円/月
- 子どもが就職するまでの教育費支出
- 住宅維持費(固定資産税・修繕積立金):約5万円/月
この分析により、必要な保障額を明確に設定することで、過剰な保険料の支払いを避け、家計に無理のない形で保障を確保できます。
既存保険の過不足も整理でき、無駄なく効率的に家族を守る保険設計に見直しました。
キャッシュフロー表で、保障額を反映した場合の資産残高の推移も確認でき、家計全体への影響を直感的に把握できます。この方法により、保障の充実と保険料の適正化を両立させることが可能です。
奥さまのパートタイム就労の提案
Yさんは「妻には家庭を守ってほしい」という希望をお持ちです。
しかし、教育費ピーク期に貯蓄残高が慢性的に不足する可能性があるため、奥さまが将来働く選択肢も検討しました。
ここでは、短時間・負担の少ないパート勤務を“将来の選択肢”として提示しました。
- 子どもがもう少し成長して手が離れてから
- 週数日・短時間勤務
- 家族の生活リズムを崩さない範囲
年収は100万円程度を想定し、教育費ピーク期の家計負担を軽減します。
キャッシュフロー表にこの収入を反映すると、貯蓄残高の不足が大幅に緩和され、家計全体の安定性を確認できます。
各課題対策後のCF表
これまで提案してきた住宅ローンの選択、保険の見直し、奥さまのパート勤務などの対策を反映した場合のキャッシュフロー表を作成しました。
参考:日本FP協会|わたしたちのくらしとお金|便利ツールで家計をチェック
キャッシュフロー表を確認すると、貯蓄残高の不足が解消され、教育費ピーク期でも安定して推移していることが分かります。
このようにキャッシュフロー表を用いることで、提案した対策が実際に家計の安定につながるかどうかを客観的に検証できます。
アドバイスまとめ

Yさんご夫妻の優先順位と家計全体のバランスを踏まえ、今回のご相談では次の3つを中心に対策を整理しました。
- 返済初期の負担を抑えられる住宅ローンの選択
返済期間を30年に設定し、教育費が増える時期に家計のゆとりを確保しました。
将来、家計に余裕が生まれれば 繰り上げ返済で25年以内の完済も視野に入る ため、柔軟に調整できるプランです。
- 公的年金を含めた必要保障額の再設計
万一の際に家族が困らないよう、生活費や教育費、住宅維持費まで含めて長期CFを試算し、過不足なく安心できる保障内容 に見直しました。
「必要な部分にしっかり備えつつ、過剰なコストは抑える」ことを意識した設計です。
- 奥さまに負担のかからない範囲でのパート就労案
今すぐ働くことを前提にせず、家族の生活リズムを守りながら将来の選択肢として働けるスタイル を提案しました。
教育費のピーク時に年100万円程度の収入があるだけでも、家計の安定性は大きく高まります。
総合的な視点で家計の課題を整理することが大切
住宅ローン、教育費、保険、老後資金は、それぞれが独立しているように見えますが、実際には互いに深く関連しています。
どれか一つを見直すだけでは十分な改善に結びつかないことも多いため、家計全体を一つの長いストーリーとして捉えることが大切 です。
今回の事例のように、
- 家計の現状把握
- 優先順位の整理
- 将来のシミュレーション
- 課題への具体策
- その効果の検証
という流れで進めることで、無理のない現実的な改善策を導き出すことができます。
FPスタイルについて

FPには、アプローチの違いによって “日本的なスタイル” と “アメリカ的なスタイル” に分類されることがあります。
※ここでの区分は、あくまで考え方の違いを説明するための便宜的なものです。
それぞれの特徴を踏まえたうえで、私がどんなFPを目指しているのかについてもお伝えします。
日本的スタイル(一般的な傾向)
日本では、FPが金融機関や保険会社とセットになっているケースが多く、どうしても次のような構造になりがちです。
- 営業色が強く、商品販売が中心になりやすい
- 手数料の仕組みが複雑で、比較しにくい場合がある
- 業態に縛られる(保険会社→保険のみ、証券会社→投資商品のみ など)
- 契約後のフォローが弱く、「売ったら終わり」になることがある
FPの力量とは別に、制度・業界構造そのものの影響を受けやすい点が特徴です。
アメリカ的スタイル(FPの役割が確立している例)
アメリカでは、FP(FA=ファイナンシャルアドバイザー)が 「家庭のかかりつけ医」のような存在として認知されています。
- 中流家庭でも FA をつけるのが一般的
- 相談内容は家計・投資・保険・税金・老後まで幅広くカバー
- 商品に縛られないトータルアドバイスが中心
- 家族のライフプランに長期で伴走する “先生業” 的な立ち位置
- 資産管理も含めたワンストップのサポート体制が確立
日本と比べると、FPの独立性や専門性が強く評価される文化と言えます。
私が目指すFP像
私は、日本のFP業界の良さも活かしつつ、アメリカ的な「伴走型」のFPでありたい と考えています。
- 商品ありきではなく、家計と人生全体を見ながら判断
- 必要な時に相談できる“身近で頼れる存在”
- 長期的に家計の変化を一緒に見守るアドバイザー
- 住宅・教育費・保険・資産形成を一体で考える支援
単に商品を紹介するのではなく、人生の大事な判断をするときに、迷ったら相談できる人でありたいと強く思っています。
家計の不安や将来設計について気になることがあれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。


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